藤原伊織 『テロリストのパラソル』
- 著者: 藤原 伊織
- タイトル: テロリストのパラソル
藤原伊織の『テロリストのパラソル』を再読した。
乱歩賞をとった直後に、買ってすぐに読んだが、面白くなかったので、途中で投げてしまい、この度、文庫本で再度読んでみた。
しかし、印象が変わることはなかった。
変わることを期待して読んではみたのだったが。
元全共闘の闘士で、現在はバーテンをしながら、世間の隅でひっそりと生きている主人公が、偶然に通りかかった新宿公園で起きた爆弾事件に巻き込まれ、次第に事件の真相が明らかにされていく中で、意外にも、それが、主人公自身の全共闘時代の過去にも深く絡んでいることがわかってくる。
てな感じで、物語は進んでいくのだが、きざったらしい文体は我慢するにしても(こういう文体がたまらんという人も多いでしょうから)、犯人の動機やトリックにはかなり無理があるように思う。ちょっと現実離れしすぎており、白けてしまった。
主人公が、全共闘時代のことを回想するシーンも、リアルであると評判を呼んだらしいが、宮崎学の『突破物』などを読んだ後では、あまりに奇麗事に過ぎるように感じられる。
どうして、この作品が、乱歩賞と直木賞をダブル受賞したのか、私には、そちらの方がミステリーだ。
切れ味: 不可
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宮崎 学