稲見一良 『ダブルオー・バック』
- 稲見 一良
- ダブルオー・バック
そのウインチェスター・M12を手にした者は、必ず何かの事件に巻き込まれる。
そんな魔性の銃と、奇しき巡りあわせで、それを手にした男たちの生き様を描いたオムニバス形式の連作短編集。
四つの短編が収められているが、共通しているのは、そこに登場する男たちの生き方に拘るスタイルの堅持である。
人生の何に対して、頑ななまでに拘るかは、人によって異なるだろう。
他人から見れば、何でそんなことに拘るのか、分からなかったりする。
が、この静かで、誇り高い自己主張のスタイルなくして、ハードボイルド小説は、成立しない。
そして、そのスタイルを貫くうえで、重要なアイテムになっているのか゜、この小説では、銃なのである。
どの短編も秀逸であるが、特に「斧」は、絶品です。
俗世間との関係を絶って、一人、山に籠り、猟犬と銃を相棒にして、猟生活を営む男のもとに、喘息持ちでひ弱な息子が訪ねてくる。
久しぶりの父子の邂逅の後、息子は、山小屋で、父と寝起きを共にしながら、都会で生活していたのでは、身に付けることのできない、サバイバルの術を学んでいく。
そして、息子の下山の日、思わぬ災難が二人に襲い掛かる。
ということで、未読の人で、関心を持った方は、是非とも本を読んでみてくださいな。
なんだか、アメリカの文豪ヘミングウェイの初期の頃の短編を思わせるような男の世界であります。
切れ味: 良
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