ピーター・ドラッカー 『プロフェッショナルの条件』 | 読書ジャンキーの本棚

ピーター・ドラッカー 『プロフェッショナルの条件』

P・F. ドラッカー, Peter F. Drucker, 上田 惇生
プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか

本書は、過去にドラッカーが発表した論文のうち、特に自己啓発に関連するものを選んで、編集されてある


ドラッカーの著作は、文章が簡潔かつ明瞭で大変読み易い。

一つには、翻訳が優れているせいもあるのだろう。

とにかく、何を言わんとしているのかが、明確に理解できるということがいい。

逆に言えば、何を言っているのか、さっぱり分からない本や、中身のないものを、さらに水で薄めたようなスカスカのビジネス本がいかに横行しているかということだ。


さて、ドラッカーであるが、もう一つの魅力は、この手の本にありがちな、人は誰でも潜在的には無限の能力をもっているのだからと、一種のスーパーマン願望を煽るような無責任な言動が、一切見られない点だ。

人は、ごく一部の天才を除けば、能力に大差はなく、伸ばせる能力にも限度があるとし、その上で、では如何にして、人間社会の九十九パーセントを構成する我々凡人が、限られた能力を活かして、意義ある人生を歩むことができるのかを説いている。


「夢はかなえる」式の無責任に成功を煽り立てる馬鹿な啓発本を十冊よりも、ドラッカーのこの一冊を熟読したほうが、余程ためになると思うのだが。


最後に、本書の中で気に入ったエピソードを引用しておきたい。


――私が十三歳のとき、宗教のすばらしい先生がいた。教室の中を歩きながら、「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。先生は笑いながらこう言った。「今答えられるとは思わない。でも、五十歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ」



切れ味: 可


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