堺屋太一 『歴史からの発想』
- 堺屋 太一
- 歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか
歴史に学ぶ組織論とでもいった類の本。
歴史を題材にした場合、どうしても傑出した天才的指導者にばかり目が向きがちである。
しかしながら、こうした天才は滅多に現われるものではない(だから歴史上に名前を残しているのだが)。
となれば、常人には参考にならない天才に焦点をあてるよりも、組織そのものの変遷に目を向けた方がいい。
とはいっても、組織史の学問は、もっとも立ち遅れている分野である、と著者はいう。
それが、本書執筆の動機の一つにもなっているようだ。
本書のラストで、著者は、「勝てる組織」を創るには、権威と権限の分離という分業体制を構築すること――組織のなかに権威を持つ人間と能力を発揮する人間(つまり権限)を分離しようという考え――が不可欠であると指摘している。
これは面白い指摘であると思うのだが、ほんの数ページしか言及していないため、あまりにも物足りなさ過ぎる。もう少し紙幅を割いて、この分担論について掘り下げてくれれば良かったのに。
組織におけるナンバーツーの立場にある女房役の役割に関する記述もなかなか面白い。
こちらには、十分な紙幅が割かれている。
著者によれば、女房役は、あくまでナンバーツーに徹しなければならず、何があっても、トップに取って代わることはなく、それを自他ともに認める人でなければ、女房役は務まらないという。
ことのついでに言えば、女房役には、トップが暴走した場合、そのブレーキ役になることが求められると思うのだが、ライブドア事件では、女房役が、トップと一緒になってアクセルを踏み続けてしまったようである。
切れ味: 可
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