菅野 覚明 『武士道の逆襲』
- 菅野 覚明
- 武士道の逆襲
『武士道の逆襲』とは、なかなか刺激的なタイトルである。
かといって、別に国権思想を煽るような本ではない。
本書「あとがき」の言葉を引用すれば、この本の目的は、下記のようになる。
今日広く流布している武士道イメージは、本書でいうところの明治武士道によって形づくられている。当事者である武士たちの精神と、明治武士道の間の深い断絶を明らかにすること。
明治武士道とは、つまり、新渡戸稲造の著した『武士道』のイメージである。
しかしながら、これは、あくまで富国強兵を第一義としていた明治期が生んだ近代思想であり、本来の武士道とは、全く異なるものであるという。
では、本来の武士道とは、いかなるものなのか?
それを、さまざまな文献を基に明らかにしていくところに、本書の醍醐味がある。
そして、再度、本書「あとがき」の言葉を引用して、「武士道」なるものを凝縮して言えば、
武士道の基本骨格は、キーワードで示すなら、「私」「戦闘者」そして「共同体」である。これらは、それぞれ「自立」「実力」「心情的一体」という三つの価値に対応している。
となる。
新書でありながら、内容はかなり充実しており、この方面に関心のある人にとっては、理解を深めるのに最適な本といえる。
切れ味: 良
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