甲野 善紀, 内田 樹 {『身体を通して時代を読む』
- 甲野 善紀, 内田 樹
- 身体を通して時代を読む
文化人的志向の強い古武術家・甲野善紀と、フランス現代思想や身体論を専門とする文化人にして、合気道六段の内田樹の二人による対談集である。
内田によれば、この本は、「さまざまなトピックを武術的な視点から」論じたものであるそうな。
というのも、二人が対談をするに際して、その前提条件として、武術家は、定義上どのような問題についても適切に対処できなければならない、としているためであるという。
何故といえば、内田の言葉を引用すれば、次のようになる。
つまり、「どうすれば自分の心身のパフォーマンスを最高レベルに維持できるか」という問いにつねに最優先的に取り組むことを課題とする以上、武術家は彼を含む社会全体のあり方についても配慮を怠ることができない――からだ。
というわけで、本書では、武術そのものについては、あまり論じられてはおらず、学校教育、スポーツトレーニング、科学的思考について、武術家敵視点から観た場合の問題点に、多くの紙幅が割かれている。
甲野の科学やスポーツへの批判意見は、かなり我田引水に感じられるので、割り引いて読む必要はあるが、多面的な物の見方があることを認識させてくれるという意味において、なかなか面白い対談集ではある。
切れ味: 可
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